第4回年次大会(2011年9月開催)


お知らせ (2011年8月11日更新)

延期になっていました第4回科学コミュニケーション研究会 年次大会を、以下の日程で実施する事にいたしました。


[第4回科学コミュニケーション研究会 年次大会のご案内]

テーマ: 「科学コミュニケーションの評価 ~幸福度を測る~」
日程:2011年9月24日(土)、25日(日)
場所:東京大学 本郷キャンパス(東京都文京区)
担当:横山 広美、高梨 直紘(東京大学)

■ 開催趣旨

今回の研究会では、科学コミュニケーションの評価、中でも幸福度の測定に着目します。科学コミュニケーション活動は、不利益を被らないようにする「最小不幸の実現」という観点からも評価できますが、科学が人間の幸福にどのように寄与できるのかという「最大幸福の実現」の観点も重要です。科学に触れてわくわくしたり、どきどきしたり、それを仲間と共有できた時の喜び、そのようなものを私たちは評価したいと考えています。

そこで、私たち科学コミュニケーション研究会では、「評価」をテーマにした研究会を開催することにいたしました。科学コミュニケーション分野外でご活躍される先生方、特に幸福をどう測定するかという点について考察を行っている方々をお招きして、お話しをうかがいたいと考えています。東日本大震災とそれに続く諸々の事態を経験した今、私たちになにが語れるのか。議論していきたいと思います。

■ 参加方法

当日、直接会場の方へお越し下さい。事前申し込みは不要です。

■ 会場へのアクセス

24日(土) 11:00-13:00
福武ホールラーニングシアター (東京大学情報学環・福武ホール B2F)

24日(土) 14:30- / 25日(日) 終日
小柴ホール (東京大学理学部1号館2F)

■ 招待講師一覧

大島 まり氏(東京大学)
菊池 吉晃氏(首都大学東京)
佐倉 統氏(東京大学)
前野 隆司氏(慶應義塾大学)
山形 辰史氏(ジェトロ・アジア経済研究所)

■ 招待講演・講演概要

科学コミュニケーションの過去・現在・未来 ─3.11以後を考える─
佐倉 統 (東京大学 情報学環・学際情報学府 教授)

概要:科学と社会のコミュニケーションは、科学技術に二次的に付随するものではなく、科学という営みが本来必要とする活動である。つまり、「科学コミュニケーションは科学の一部である」と考えたい。にもかかわらず、日本などで近年になってようやく科学コミュニケーションの重要性が強調されるようになってきたのは、科学技術の社会における重要性が相対的に増加したための帰結である。科学と社会の距離が遠くなったからというよりも、むしろ科学と社会の距離が近くなったがゆえに両者のコミュニケーションが必要とされるようになってきたのだと考えられる。3.11大震災とそれに続く福島第一原発事故は、日本の科学技術と社会の関係に大きな課題を突きつけた。何が問題で、どう対応していけば良いのか、考えたい。

アウトリーチ活動の評価について
大島 まり (東京大学 生産技術研究所 教授)

概要:
科学技術は経済の基盤を支えるだけではなく、電気や車、携帯電話など様々な形で私たちの日々の生活に浸透しています。一方、先鋭化、専門化している科学技術が、私たちの生活にどのように生かされているのか、理解するのはなかなか難しいです。このようなギャップを埋めるために、東京大学生産技術研究所では、知の社会浸透ユニット(Knowledge Dissemination Unit)を通して、出張授業や貸出教材などの様々なアウトリーチ活動を展開しています。本講演では、KDUのアウトリーチ活動の紹介とともに、事前・事後・追跡アンケートなどを通したアウトリーチ活動の評価についてふれます。
東日本震災後、科学技術が社会にどのように捉えられ、判断され、受容されていくのか、科学技術の社会的意義が改めて問われるようになってきました。このような社会変化のなか、アウトリーチ活動の果たす役割を、皆様とともに考えていきたいと思います。

「幸せ」を感じる脳
菊池 吉晃 (首都大学東京 大学院 人間健康科学研究科 教授)

「幸せ」の神経基盤について、筆者らのこれまでの研究結果の中から考察してみた。人が幸せを感じる際の神経基盤については、「感動」、「母性愛」、「懐かしさ」などに関する研究結果で共通して活動する前頭前野眼窩皮質(OFC: orbitofrontal cortex))を中心とした報酬系が大きな役割を果たすことがわかった。さらに「幸せ」を守るための神経基盤については、「自己肯定性の防御」、「化粧と社会性」、「母性行動」などの研究結果から、前部帯状回(ACC: anterior cingulate cortex)を中心とした警戒系が重要な役割を果たすことが示された。以上の結果から、OFCとACCを中心とした報酬系と警戒系が「幸せ」の神経基盤として重要であることが示唆された。

国際開発や貧困削減の成果を測る:「あばたもえくぼ」の評価論
山形辰史 (ジェトロ・アジア経済研究所 教授)

公的セクターの効率性が問題視されるようになり、公的セクター全般に成果主義が適用されるようになってきている。国際協力のほとんどが公的セクター(国際機関、政府機関、NGO)によってなされるので、国際協力の成果をどのようにして測るか、が課題となっている。「幸福度」は国際開発の成果指標として重要視されている。幸福度を測るには、主観的評価を問うアプローチと、選択肢の多さ(選択可能性の広さ)を客観的に測るアプローチがある。後者のアプローチが支配的であるが、前者のアプローチへの注目も集まっている(ブータンのGross NationalHappinessが有名)。客観指標も、GNPから人間開発指標(アマルティア・センらが開発)へと深化している。

科学と幸福測定
前野隆司 (慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 教授)

まず、「科学は行うべきか?」についての哲学・倫理学的議論について概説する。次に、科学、好奇心、幸福の関係についての心理学分野における研究結果について述べる。さらに、近年、心理学や経済学の分野で行われてきた幸福研究の全体像をレビューする。すなわち、幸福感や生活満足度に影響する様々な因子について述べる。最後に、幸福学の体系化・定量化に向けて講演者らが目指している点について述べる。

■ プログラム

9月24日(土) 会場:11:00-13:00 福武ホール(情報学環) / 14:30-19:30 小柴ホール(理学部1号館)
10:30- 開場
11:00-11:30 挨拶/趣旨説明(横山広美/高梨直紘)
11:30-13:00 招待講演1(各講演45分)
11:30 佐倉統 (東京大学 情報学環・学際情報学府 教授)
12:15 大島まり (東京大学 生産技術研究所 教授)
ここまで福武ホール@情報学環
13:00-14:30 昼食
ここから小柴ホール@理学部
14:30-15:30 口頭発表2(1演題15分,12分講演3分質疑) 座長:
14:30 橋本裕子「対話型科学コミュニケーション講義に対する評価軸の設定と検討」
14:45 浅見奈緒子「天塾6年間全59回の軌跡」
15:00 前田邦宏「安心という幸福のための科学技術イノベーションと国境なき情報共有ネットワーク構築についての提言」
15:15 飯野孝浩「大学発のアウトリーチにおける、学術分野の組み合わせの評価 -大学博物館ガイドツアーの事例から-」
15:30-16:00 ポスター発表1(1演題3分,3講演毎に1分質疑)
15:30 佐野和美「小・中学校への出前授業の実践と反響」

羽村太雅「柏の葉サイエンスエデュケーションラボの活動とその評価」

笹川由紀「遺伝子組換え農作物に関するサイエンスコミュニケーションにおける情報提供と体験の効果」

15:40 亀谷和久「科学ライブショー「ユニバース」の15年間の軌跡」

渡辺謙仁「宇宙を身近にする衛星開発プロジェクトのメンバーに対するアンケート調査」

佐藤祐介「地球の調べ方プロジェクト」

15:50 山田広明「創造的科学コミュニケーションは可能か?:ソーシャルキャピタルからのFabLabという実践の定量的把握の試み」
16:00-16:30 コーヒーブレイク&ポスターセッション
16:30-18:00 総合討論I:「科学コミュニケーション分野における評価の現状把握」

登壇者:佐倉統、大島まり、横山広美

司 会:高梨直紘

18:00-19:30 懇親会(参加費1000円、当日徴収)
9月25日(日) 会場:小柴ホール(理学部1号館)
10:00- 開場
10:30-12:00 口頭発表2(1演題15分,12分講演3分質疑)
10:30 小林泰彦「食品照射と食品の放射能汚染 ―科学の役割と情報提供のあり方―」
10:45 市川まりこ「好奇心を生かした食品照射の体験実験」
11:00 尾崎勝彦「観望会参加者の情動変化の測定」
11:15 飯塚礼子「児童作品から天文普及の効果をはかる」
11:30 白川慶介「大学院生による出身高校への出張授業 -大学院生出張授業プロジェクト BAP-」
11:45-12:00 ポスター発表1(1演題3分,3講演毎に1分質疑)
11:45 日下部展彦「九段中等教育学校天文部協力による地域向け観望会」

川越至桜「鎌倉市生涯学習推進委員会による小学校での出前講座」

12:00-13:30 昼食
13:30-15:00 招待講演2(各45分)
13:30 菊池吉晃 (首都大学東京 健康福祉学部 教授)
14:15 山形辰史 (ジェトロ・アジア経済研究所 教授)
15:00-15:30 コーヒーブレイク&ポスターセッション
15:30-16:15 招待講演3(各45分)
15:30 前野隆司 (慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 教授)
16:15-18:00 総合討論II:「新しい評価軸の模索」

登壇者:前野隆司、菊池吉晃、山形辰史、横山広美

司 会:高梨直紘


■過去の開催情報

2010/03/12 第1回科学コミュニケーション研究会 年次大会@京都大学
2010/07/24 第2回科学コミュニケーション研究会 年次大会@東京大学
2010/11/20 第3回科学コミュニケーション研究会 年次大会@日本科学未来館
※過去の年次大会の資料につきましては、「資料」のコーナーにまとめられています。